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東京地方裁判所 平成元年(特わ)1355号 判決 1989年11月15日

本店所在地

東京都渋谷区道玄坂二丁目二九番一二号

有限会社ビッグコイン

千葉県山武郡大網白里町北飯塚二五番地の五

右代表者代表取締役 佐藤孝夫

本店所在地

東京都港区新橋二丁目八番一四号

有限会社エフ・エム企画

東京都多摩市豊ケ丘三丁目三番地五-三〇六

右代表者代表取締役 境井進

本籍

東京都新宿区上落合一丁目一八五番地

住居

同都杉並区高円寺南一丁目三二番一〇号

会社役員

青柳壯二良

昭和二四年七月一九日生

右の者らに対する法人税法違反、右青柳壯二良に対する所得税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社ビッグコインを罰金一七〇〇万円に、被告人有限会社エフ・エム企画を罰金二〇〇〇万円に、

被告人青柳壯二良を懲役一年六月及び罰金七〇〇万円に、各処する。

被告人青柳壯二良において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人青柳壯二良に対し、この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社ビッグコイン(以下、「被告会社ビッグコイン」という。)は、東京都渋谷区道玄坂二丁目二九番地一二号に本店を置き、個室マッサージ業の経営等を目的とする資本金一〇〇万円の有限会社、被告人有限会社エフ・エム企画(以下、「被告会社エフ・エム企画」という。)は、同都港区新橋二丁目八番一四号に本店を置き、個室マッサージ業の経営等を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人青柳壯二良(以下、「被告人青柳」という。)は、昭和六三年三月ころまで同都板橋区上板橋二丁目三四番九-一〇二号に居住し、右両会社の実質的経営者として両会社の業務全般を統括するかたわら、他人の不動産取引に資金を提供してその利益分配金収入を得ていたものであるが、被告人青柳は

第一  被告会社ビッグコインの業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

一  昭和六〇年二月八日から同六一年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が七〇七六万五〇八三円(別紙1修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六一年三月三一日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三一四万九八五二円でこれに対する法人税額が九七万六一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第一〇〇五号の1)を提出し、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二九六五万七二〇〇円と右申告税額との差額二八六八万一一〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

二  昭和六一年二月一日から同六二年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億三三二万九三二二円(別紙3修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六二年三月二七日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一九八五万一二五〇円でこれに対する法人税額が七六〇万六一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四三七五万二一〇〇円と右申告税額との差額三六一四万六〇〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

第二  被告会社エフ・エム企画の業務に関し、法人税を免れようと企て、前同様の方法により所得を秘匿した上

一  昭和六一年二月一日から同六二年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が九六四二万六二一一円(別紙5修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六二年三月二五日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三〇一万二〇九一円でこれに対する法人税額が九三万七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四〇七六万五四〇〇円と右申告税額との差額三九八三万四七〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ

二  昭和六二年二月一日から同六三年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が八五九三万八〇八五円(別紙7修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六三年三月三〇日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三九五万三三九五円でこれに対する法人税額が一一八万四八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の4)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の正規の法人税額三五一三万二九〇〇円と右申告税額との差額三三九四万八一〇〇円(別紙8脱税額計算書参照)を免れ

第三  自己の所得税を免れようと企て、他人の不動産取引に資金を提供したことによって得た利益分配金収入を他人名義の預金口座に預け入れるなどの方法により所得を秘匿した上

一  昭和六一年分の実際総所得金額が四四三五万四一六六円(別紙9修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六二年二月二六日、東京都板橋区大山東町三五番一号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の総所得金額が一二三五万四一六六円でこれに対する所得税額はすでに源泉徴収された税額を控除すると二五万九三〇〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の5)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一七二三万三五〇〇円と右申告税額との差額一七四九万二八〇〇円(別紙10脱税額計算書参照)を免れ

二  昭和六二年分の実際総所得金額が四九二〇万七七四一円(別紙11修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六三年三月二日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額が三一一八万円で、これに対する所得税額が三二九万四四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の6)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一三一一万三二〇〇円と右申告税額との差額九八一万八八〇〇円(別紙12脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人青柳の当公判廷における供述

一  被告人青柳の検察官に対する平成元年七月一七日付、同月二五日付各供述調書

判示第一及び第二の全部の事実につき

一  被告人青柳の検察官に対する平成元年七月一八日付供述調書

一  境井進、日高ツギ子、馬田利枝の検察官に対する各供述調書

判示第一及び第三の全部の事実につき

一  佐藤孝夫の検察官に対する供述調書

判示第一の全部の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上高調査書(記録第四〇六号)

2  給料手当調査書(記録第四〇八号)

3  福利厚生費調査書(記録第四〇九号)

4  広告宣伝費調査書(記録第四一六号)

5  雑損失調査書(記録第四二〇号)

一  収税官吏鈴木勇夫作成の領置てん末書

一  被告会社ビッグコインの商業登記簿謄本

判示第一の一の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  役員報酬調査書

2  消耗品費調査書

3  事務用品費調査書

4  旅費交通費調査書

5  水道光熱費調査書

6  車両費調査書

7  支払手数料調査書

8  接待交際費調査書

9  新聞図書費調査書

10  雑費調査書

11  保証費調査書

一  押収してある被告会社ビッグコインの法人税確定申告書(61/1期)一袋(平成元年押第一〇〇五号の1)

判示第一の二の事実につき

一  収税官吏作成の事業税認定損調査書(記録第四二二号)

一  押収してある被告会社ビッグコインの法人税確定申告書(62/1期)一袋 (同押号の2)

判示第二の全部の事実につき

一  村井孝子の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上調査書(記録第四三七号)

2  給料手当調査書(記録第四三八号)

3  福利厚生費調査書(記録第四三九号)

4  広告宣伝費調査書(記録第四四〇号)

5  事業税認定損調査書(記録第四四二号)

一  収税官吏吉田彰一作成の領置てん末書

一  被告会社エフ・エム企画の商業登記簿謄本

判示第二の一の事実につき

一  押収してある被告会社エフ・エム企画の法人税確定申告書(62/1期)一袋(同押号の3)

判示第二の二の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  雑損失調査書(記録第四四一号)

2  損金不算入役員賞与調査書

一  押収してある被告会社エフ・エム企画の法人税確定申告書(63/1期)一袋(同押号の4)

判示第三の全部の事実につき

一  被告人青柳の検察官に対する平成元年七月二〇日付供述調書

一  大瀧榮一、森田建一、浅見保明の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の分配金調査書

一  収税官吏大鹿強作成の領置てん末書

判示第三の一の事実につき

一  押収してある所得税確定申告書(61年分)一袋(同押号の5)

判示第三の二の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  利子収入調査書

2  源泉徴収税額調査書

一  押収してある所得税確定申告書(62年分)一袋(同押号の6)

(法令の適用)

被告会社ビッグコイン及び被告会社エフ・エム企画について

一  罰条

被告会社ビッグコインの判示第一の一、二の各所為及び被告会社エフ・エム企画の判示第二の一、二の各所為につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

二  併合罪の処理

各被告会社につき、いずれも刑法四五条前段、四八条二項

被告人青柳について

一  罰条

判示第一の一、二及び判示第二の一、二の各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項、判示第三の一、二の各所為につき、いずれも所得税法二三八条一、二項

二  刑種の選択

各法人税法違反の罪につき、いずれも懲役刑、各所得税法違反の罪につき、いずれも懲役刑と罰金刑の併科を各選択

三  併合罪の処理

刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の一の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

四  労役場留置

刑法一八条

五  刑の執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は個室マッサージ業の経営等を目的とする被告会社ビッグコイン及び被告会社エフ・エム企画の実質的経営者である被告人青柳が、売上の一部を除外するなどして、被告会社ビッグコインの二年度分の法人税合計六四八二万七一〇〇円及び被告会社エフ・エム企画の二年度分の法人税合計七三七八万二八〇〇円をいずれも免れ、更に、自ら他人の不動産取引に資金を提供して得た利益分配金収入を他人名義の預金口座に預け入れるなどして、二年分の所得税合計二七三一万一六〇〇円を免れたというものであって、その逋税金額は多額であり、その逋税率は、いずれも二年間を通じて、被告会社ビッグコインが八八・三パーセント、被告会社エフ・エム企画が九七・二パーセント、被告人青柳が八九・九パーセントと高率である上、その動機に特に酌むべき点はないし、その所得秘匿の態様も計画的で、犯情は悪質というほかなく、被告人らの刑事責任を軽視することはできない。

しかしながら、被告人は、本件発覚後全面的に犯行を自白し捜査に協力していること、自己及び両被告会社の修正申告を行った上、本税、附帯税の納付を終わっていること、被告人は被告会社の経営を実兄に委ねて反省の意を表明していることなど、被告人らに有利な事情も認められるので、これらの事情を総合勘案して、被告人らに対し、主文掲記の刑をもって臨むこととし、なお、被告人青柳に対しては、今回に限り社会内で自力更生させるのが相当であると判断して懲役刑の執行を猶予した次第である。

(求刑 被告会社ビッグコインにつき罰金二〇〇〇万円、被告会社エフ・エム企画につき罰金二五〇〇万円、被告人青柳につき懲役一年六月及び罰金八〇〇万円)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲田輝明)

別紙1

修正損益計算書

有限会社ビッグコイン

自 昭和60年2月8日

至 昭和61年1月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

有限会社ビッグコイン

自 昭和60年2月8日

至 昭和61年1月31日

<省略>

別紙3

修正損益計算書

有限会社ビッグコイン

自 昭和61年2月1日

至 昭和62年1月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

有限会社ビッグコイン

自 昭和61年2月1日

至 昭和62年1月31日

<省略>

別紙5

修正損益計算書

有限会社エフ・エム企画

自 昭和61年2月1日

至 昭和62年1月31日

<省略>

別紙6

脱税額計算書

有限会社エフ・エム企画

自 昭和61年2月1日

至 昭和62年1月31日

<省略>

別紙7

修正損益計算書

有限会社エフ・エム企画

自 昭和62年2月1日

至 昭和63年1月31日

<省略>

別紙8

脱税額計算書

有限会社エフ・エム企画

自 昭和62年2月1日

至 昭和63年1月31日

<省略>

別紙9

修正損益計算書

青柳壯二良

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

<省略>

別紙10

脱税額計算書

昭和61年分 青柳壯二良

<省略>

別紙11

修正損益計算書

青柳壯二良

自 昭和62年1月1日

至 昭和62年12月31日

<省略>

別紙12

脱税額計算書

昭和62年分 青柳壯二良

<省略>

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